その去っていく後ろ姿にボソッとつぶやいて、ジョーは紫蘇の陰に身を潜めているフランシーヌに手を差し伸べた。

フランシーヌは、まばたきもせずにジョーを見上げ、その差し出された手をとった。

「…あなたは誰? なにを知ってるの? …なにを、苦しんでるの?」

少女は、曇りのない大きな瞳でジョーを見つめる。

ジョーはドギマギと目をしばたくと、大きなため息をついて、パッっと破顔した。

「すっげー、ドキドキしたぁー。あー、あっさり帰ってくれて良かったぁー」

その様子があまりにオーバーだったので、フランシーヌはクスッと笑った。

彼が、あれくらいで動揺するような人間ではないことは、フランシーヌにはもうわかっていた。

「ケガないか?」

くりくりと、子供にするように、ジョーはフランシーヌの頭を撫でる。

子供扱いしないで…と、頭を撫でる手を払いのけようとして、フランシーヌは思いとどまった。

ジョーの、大きくて暖かい手が、心地よかったからだ。

フランシーヌは、少し上目遣いにジョーを見上げ、はにかんだように微笑んだ。