ジョーは、眼前に展開する悪趣味なホラー映画のような映像を、ぼーっと眺めながら、コーヒーをすすった。

そんなふうに見えるのは子供の頃からずっとなので、今更どんな感慨も浮かばない。

ただ。皆が、そろいもそろって同じ程度の余命しかないように見えるのが、少しだけ気がかりだった。

ぼんやりと、人類には未来がないのかもしれないと、思っていた。

ジョーの左目は、人間の一生を映すだけではない。

街路樹や自動車、電気機器、衣類や雑誌、道ばたの石に至るまで、その原料となったものがこの世に存在してから朽ち果て分解されてゆくまでの姿が目に映る。

親兄弟にも気味悪がられ、預けられた研究機関では実験動物扱いされた挙げ句、彼の左目の能力は、こう仮定された。