「ノーテンキに笑うくせに厭世主義者なのね」

フランシーヌは、見透かしたように笑った。

笑顔のフランシーヌは、年相応にあどけない。

街頭で反戦演説をしているときの彼女とは別人のようだ。

「えっ? オレの笑い方、変かな?」

ジョーは、背丈ほどにも伸びたミニトマトの林の中にたたずんで、所在なげに頭をポリポリとかいた。

「そうじゃないけど、ほんと、なにも考えてないみたいに、幸せそうに笑うなぁ…って」

「えっ? そ、そうかな? オレって、もしかして、バカみたいに見えるのかな?」

五つも年下の女の子に子供扱いされているような気がして、ジョーは困ったように首をすくめた。

彼は、持って生まれた特殊能力ゆえに、いつの頃からか笑顔で心の動きをカムフラージュする術を覚えた。

それは、真実に対する武装なのかもしれない。