―さっ、明日も仕事があるんだろ?

時計を見ると午前二時を回っていた

―ホントはもっと一緒にいたいけどさ、君みたいな美人と
送り狼になりたいけど、タイムリミットだね

そう、普通の男は求めてくる場面だ
そんなガツガツした人間が嫌で、軽い男が嫌で、そんな場面や、可能性から避けて生きてきたんだ

それが今…



しかたなくドアを開き、
―ありがとう

そう告げた

このままでは、このままになってしまう

感情ではなく《本能》がそれをとめる

私は夢中でバッグをあさった

バッグの中の携帯はメール着信を告げるランプが点滅している

それも気にならなかった

仕事柄、いつも持っていた自分の名刺…
その裏にメールアドレスを記入した

―あ、あの…せっかく知り合ったんだし…これ、私のアドレス…またメールでも下さい

今まで聞かれても、男にアドレスを教えた事なんてなかった

自分から渡すなんて…いや、聞かれていたら電話番号も教えていたに違いない…

後先なんて考えている余裕はなかった

―あ、ありがとう
メールしていいの?じゃあまた…

そう言うと、私の名刺を胸のポケットに入れ、ポンポンとその上を叩く素振りを見せた

その素振りに、また自分の胸の中心が固くなる…

無理に笑顔を作り、じゃあねとドアを閉めた