私の住むマンション

そこに到着した時、たわいない会話はいつしか二人の敬語を取り払っていた

自分の得体の知れない欲求を抑える私に彼が話しかける

―あのさぁ…

今日は楽しかった?

―う、うん…

(でも今はそんな記憶なんて忘れてしまった…)

―沢山の人と話しただろ?

―うん、何だかすぐに囲まれちゃったから

(でもそんな男達の事は覚えてすらいない)

―部屋では会わなかったのにな

―話しなかったね

(貴方は気づいていないだけ
私は二度も会ったよ
そして触れられた…)

―駄目だよ 初めての男の車に酔って乗る事は良くないよ

―そうだよね 東住さんがいい人で良かった

(いい人かどうかよりも、もっと沢山この感覚を味わいたい…)


次の瞬間…

彼は私の手を取り、強く握り絞めた―

私の上に覆い被さり、右手で助手席のリクライニングを倒し、顔を近付ける

痺れるような感覚が全身を駆け巡る


何が起こったのかはわからない

が、まるで待っていたかのように、体中が歓喜に震え、鳥肌が立った