俺はあしたのジョーが好きだった。

あの愛想のない立ち振る舞い。
そこから漂う哀愁。
陰のある笑い。
脆さ。
儚さ。


「明日の為のその一」、等と呟きながら、その実明日等なくても良いと思っていそうで……。

明日等なくても良いと思っていながらにして、「明日の為のその一」等と嘘ぶく。

そして明日をかえりみず、「死」を迎える。

いや、実際には彼が死んだのかどうかはわからない

しかし「真っ白な灰」になったあの姿に強烈に憧れた。

彼が死んだのであれば、短すぎる人生を突っ走り、苦悩や努力の末リングサイドにうなだれる。

彼は幸せだったのだろうか……とすら想わせる最後の顔は、それでも笑っている。