「で、浩
お前の好きな女って誰?」


ニヤニヤしながらそう聞くと
浩は日に焼けた頬を恥ずかしそうに掻いた。


「……うちの顧問の娘」

「え!?
サッカー部の顧問って
あの角刈りの日野だよな?
娘も角刈り?」

「オイ!んなわけーねーだろ。
アイツに全然似てない
超カワイイ大学二年の娘がいんだよ!

試合の日とか
ちょくちょく応援に来てくれて
話してるうちに自然とさ」

「へぇ年上か〜、
しかも日野めちゃめちゃ頑固親父っぽいし
確かに大変そうだな」

「だろ?」


そう微妙な表情で返事をしながらも
どこか嬉しそうな浩を見て
何だか俺まで楽しくなってきて

その後は授業そっちのけで
浩の恋愛話に花を咲かせた。


――この日の俺はいろんな奴のいろんな話で
自分はどうしたらいいんだろうと
かなりの混乱状態だった。

でも理由もわからず
アキが休んだのはやっぱり心配で
その日はとりあえず
アキにメールで様子を尋ねたんだけど

……いくら待っても
彼女から返事が来る事はなかった――。