「俺も……好きな奴いるんだ」

「へぇ」

「でもこれが結構無理目な相手でさ。

あと、なんつーか
この年になると回りの影響もあって
マジに片思いとかどこかダセェ
みたいな風潮があるじゃん?

女なんてテキトーに
それなりに可愛い子とつきあって
別れたら次みたいな」

「そう、なのか?」

「少なくとも
俺らの回りはそうだろ」

「ああ、確かに」


カズマと拓郎とかは特にそうかも
んでいつもケンゴに怒られてるし。

それに気付いたから二人して苦笑い。


「そういうの理由にして
自分の気持ちごまかそうとしてた。

まだ何もしてないのに、
こんなの俺らしくねーし無理そうだから
片思いなんかやめちまおうって。
……お前の話聞くまでは」

「……浩」

「ほらやっぱお前って俺らの中でも
ちょっと特殊じゃん?

無茶苦茶顔よくて女にモテルけど
別にスカしてる訳じゃなく
俺らと一緒にふざけたり
バカやったりしてさ。

確かに女と遊びまくってたけど
実はそんなのよりバンドの方が大事で
かなりの音楽バカで
不器用なとこあったりして
どっか憎めないっつーか。
そういう飄々としたとこも
多分女が寄ってくる理由に
なってると思うんだけど。

つまりは何が言いたいかってーと
そんな超モテまくりのお前が
恥ずかしげもなく
片思いしてるって言うから
妙に励まされた気分になって
俺も頑張ってみるかって思ったんだ」

「……うん」

「で〜、そう思ってた矢先
さっきみたいな事言われて?
自分の事みたいな気がして
めちゃめちゃ悔しくなっちゃってさ。

本当完璧な八つ当たり。
マジで悪かった」


そして俺の方にチラリと視線を送って
目を伏せるから
二人して真面目に何してんだとか
妙に気恥ずかしい気持ちになった。

浩も多分俺と同じ事を思ったらしく
この変な空気をごまかすみたいに
シャーペンを指の間でクルクルと回す。