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そのまま授業をさぼると言う二人と別れ
その後俺が向かったのはアキの家
……なわけはなく
5限が始まった自分の教室。

本日二度目にもなる
教師の愚痴を受け流しつつ自分の席に座ると

俺の前では浩が机に肘をつき
そこに頭を乗せて
うとうとと居眠りをしているのが見えた。

まあ食後の古典の授業なんて
寝てくれと言っているようなもんだし。


少し身を乗り出して
迷うことなく浩の腕をガクッと抜いてみると
重力に逆らうことなく
そのまま机に顎を強打する目の前の男。


訳もわからず「痛っー!!」と悶える姿に
クククと低く笑いながら呼びかける。


「ディフェンスちょっと甘いんじゃねぇ?
サッカー部の次期キャプテン様よ」


浩は後ろを振り返り不機嫌そうな顔で
少し赤くなった顎をさすった。


「うるせーな、俺はFWだからいーんだよ。
しかもうちの部のスタイルは
イタリアよりもスペイン代表よりだし」

「あ〜、攻めばっか力入れて
守り疎かにしてるから
肝心なとこでいつもやられるんだよなぁ
うちのサッカー部。
スペイン代表と一緒」

「そうそう、この前の試合もロスタイムで
カウンター2発くらって逆転負け。
悔しくってさ
……って思い出させんな、泣くぞ!」

「ははっ、悪い悪い」


コイツ見た目によらず涙脆いかんなぁ
なんて思い出しながら
俺は机にもたれるようにして
さらに続ける。


「あとさっきは掴み掛かって悪かったな。
お前の言った事全部当たってて
ついカッときちまった。
……ごめん」


浩は驚いたように目を見開いた後
顔を前に向けたまま
ふて腐れたように呟いた。


「お前が先に謝るなよ。
さっきは俺が悪かったんだ。
つい、八つ当たりした」

「八つ当たり?何が?」