ズケズケした物言いに若干凹まされながら
俺は神妙な顔で答えた。


「お前らは
あの二人が一緒にいるとこ見てないから
そんな事言えんだよ。

見たらなんつーか
他人が入り込む隙なんかないってのが
凄いよくわかる」


……それで救いようのないほどの
絶望感に襲われた。


「それに
何でか分かんねーけど頭にきたんだ。
アキは欲しいもんがちゃんとあって
それが何かってのも分かってんのに
いつも我慢して手に入れようとしない。

本当は幸せになれるのにさ。
歌にしてもユウキの事にしても。

いつかっていつだよ?
今やれることがあるのにやらないなんて
今の自分がかわいそうだろが」

「でも西条が素直に
自分の手に入れたいもん
手に入れたとしたら
アイツはユウキのもんになるって事だぞ。
お前はそれでもいいのかよ?」


問い詰めるようなカズマの言葉に対し


「そんなん想像したら
確かにスゲーショックだし嫌だ。
……嫌だけど
アキが幸せになればいいよ。

あんないつも他人と壁作って
この世界にいるのは自分一人みたいな
寂しい顔してなきゃ何でもいい」

「……純愛やな」


呆れたようにケンゴが笑いながら
制服のズボンのポケットから煙草を取り出しさらに続ける。


「お前の気持ちも分からんくない。
でも当時西条は15歳の中坊。
ユウキは確か19ぐらいか?
奴はデビューを控えた
成人してない一介のミュージシャン。

いくら新幹線で
一時間ちょっとの距離やからって
会いたいときにすぐ会えるわけやない。
気持ちさえあればとか
そんな単純なもんやないんやきっと」

「……そうかな」


――俺ならきっと違う道を選ぶのに。

その後はケンゴが差し出した煙草を
カズマと二人手に取り
青空に三本の白い煙が溶けていくのを
三人そろって静かに見送った。