思わず俺につかみ掛かってきた
カズマの腕をサラリとかわすと
屋上のドアが開き
下級生らしき女達が入ってきた。

手には弁当らしき物を抱えてるから
ここに昼飯でも食べに来たんだろう。


あんまり深刻な話はもう出来そうにねえな
なんて気持ちになったとき
カズマがいきなり俺に抱きついてきた。


……は?なんだこりゃ?


あまりに驚いたのと
首元にカズマの髪がサラサラと触れた
気持ちの悪さで一瞬脳が固まった。


ここを通り過ぎて
屋上の奥に行こうとしてた女達も
俺らの姿を見て足を止め
凄い顔をしてこちらを凝視している。


するとカズマは俺に抱き着いたまま
顔だけ彼女達の方に向け


「あのさ、君達
俺ら超取り込み中だから
よかったら二人きりにしてくれるかな」


と言ってにっこり笑うと
女達は顔を真っ赤にして
「は、はい!」と上擦ったように頷き
悲鳴をあげながら
走って屋上から出て行ってしまった。


鉄の扉が閉まると同時に
俺はカズマを蹴っ飛ばして引きはがし
一方カズマは顔をしかめたまま


「オェー
俺だって何を好き好んでこんな事。
だってあのままじゃ
肝心な事聞けないまま生殺しだし。

それにお前に変な噂たてば
学校で色目使う女も減るだろうし
ほら今のリョウは
スキありまくりで危なっかしいから。
一石二鳥だろ?」

「そんな得意げに言ってるけど
お前にも同じ噂立つって事たぞ?
いいのかよ」

「……あっーそっか!
やべえ全然そんなの頭になかった!
って!どーすんだよ、リョウ。

俺隣のクラスの知佳子
今おとしてるとこなのに!」

「知らねーよ」


かなりのオーバーアクションで
頭を抱えながら
「今までの努力の結晶がぁぁぁ!」
なんて絶叫してるカズマに

呆れた眼差しを投げ掛けてると
俺の背後でドアが開く音。


またかよ……
やっぱ屋上じゃなくて
部室行けばよかったな。