そんな事を考えながら
カズマに促されるまま教室から出る。


ドアを閉める直前
雑誌を拾いながら席につく浩と目が合うと
浩はバツが悪そうに顔をしかめた後
すぐに俺から視線をそらした。


――その後暗黙の了解で向かったのは
もちろん保健室なんかじゃなく屋上。


重い鉄の扉を開けると
別世界みたいに爽やかな風が流れてきて
温かい日の光りが俺達を照らしてた。


俺はフェンスのところまで歩き
何となく校庭を無言で眺めると
グランドには人の塊。

授業は高跳びだったらしく
もう授業が終わるからか
バーやらマットやらを
片しにかかっている姿。


俺の背後でパタンと携帯を閉じる音がして
アスファルトの地面に
直接あぐらをかいたカズマが
延びをしながら口を開いた。


「で、何があった。
お前がそんな目してる理由は?」


……目?

訳がわからず振り向くと
カズマはさっきまでとはまるで違う
真剣な顔で俺の事を真っすぐに見た。


「何の、事だ?」

「お前自覚ねーのかよ。
二年前と同じような目してんぞ」

「マジ……で?」

「マジマジ。
まぁあの時ほど酷くはねえけど
ギラギラと心に余裕ない感じ?」


そう言えばユリもさっき
俺の目がどうとか言ってたな――。


「……カズマ」

「何?」

「さっきは止めてくれて助かった」

「別に〜」


――止めてくれなかったら
自分が何してたかわからない。

鼻歌混じりに返事をするコイツに
改めて感謝だ。


今も二年前も。