――目から火が出るとか頭に星が回るとか
本当にあるんだと思いながら
痛む頭を押さえて右側を睨み付けた。


「いてーな、カズマ!
いきなり何すんだよ!!」


そう怒鳴り付けられた当の本人は
手に持ってた生物の教科書と資料集を
俺の斜め前に座る女子に
御礼を言いながら返すと

涼しげな様子で腕を組み
俺の方に振り向いた。


「それはこっちの台詞だよ。
遅刻した上何ギャーギャーやってんだよ。
授業妨害と安眠妨害だろ」


「いや、とりあえず寝るなよ」と
山ビンのひそやかなツッコミ。

それはスルーして


「だからってそんなんで殴るなよ。
鈍痛だよ鈍痛。
脳みそグラグラ揺れたぞ今。
確実に脳内破裂したし」

「あ〜大丈夫、大丈夫。
お前の頭は破裂するほど
脳みそ入ってないから。
いや、むしろ二、三回破裂した方が
暈が増えてちょうどいいかもな」

「は!?
つまんねー冗談言ってると張ったおすぞ」

「え?つまんねーかな。
今の結構イケテると思うんだけど」


そう頭をかきながら
ヘラヘラと笑うカズマに

教室からひそかな笑いと
「確実につまんねーよ!」と
楽しげな拓郎のツッコミ。


カズマは周囲に愛想を振り撒きながら
隠れて俺の脇腹を結構強めに殴ると

「ちっとは頭冷やせ、出るぞ」と
周りに聞こえないように小声で言った後

黒板の前に立つ生物教師に向かって
軽く頭を下げた。


「山びん授業邪魔して悪い。
リョウ土曜に大雨にうたれて
風邪引いたらしくてさ、
熱も高いし
意識も朦朧としてるみたいだから
今から保健室つれてってくんね」


なんだそりゃ?
明らかに嘘ってわかんだろと
心の中で突っ込みをいれてると

山崎先生はうんうんと頷いた後


「そういう事なら仕方ないな。
ならさっさと行ってこい」


と教科書を持ってない方の手を
ひらひらと振った。


マジで騙されたのか
騙されたふりをしてるのか
はたまたどっちでもどーでもいいのか。