「リョウ遅かったな。
寝坊?」

「あれ?浩
何でお前が前にいんの?」

「てめーふざけんな。
三日前からずっとここにいるっつーの!」

「冗談だよ」

「笑えねーよ」


そう文句を言いながらも
浩はゲラゲラ笑い

窓を背にしてこちらに横向きで座り
椅子の上に足を乗せて
机に開いてたサッカー雑誌を
立てた膝の上に置いた。


やっぱ俺機嫌悪いな。
人と会話すんのめんどくせぇとか
かなりヤバイレベルだ。


でも浩は何も気にしてない様子で
ペラペラと雑誌のページをめくりながら


「ライブ楽しかったよ、リョウ。
土曜はゆっくり話す時間なかったからさ」

「ああ、来てくれてありがとな。
ライブ後打ち上げ誘おうと思ったのに
お前らいねーし」

「マジで!?
それなら拓郎達に付き合わず
残ってりゃよかったな。

ライブに来てた他校の三人組の女
裕介がいつの間にかナンパしててさ
そいつらと遊びにいっちまったよ」


話す速度と同じように
ペラペラと軽快にページをめくる浩。


「へーそっか、
で、もしかしてそんなに
盛り上がらなかったとか?」

「いーや、そこそこ楽しかったけど
何で?」

「だって打ち上げの方がよかったとか
この前の打ち上げなんて
全然女っけなかったぞ。

来てもメンバーの彼女とか
狙っても無理目の女ばっかりだし
合コンとナンパが趣味な
お前の口から出た言葉とは思えねー」

「それは大袈裟にいいすぎだろ?」

「そーか?」

「……まぁ確かに
前の俺はそうだったけど」


浩は日に焼けた頬をかきながら
小さな声で言い訳じみたように話した後

「だから言いたいのは
そんなんじゃなくて」と
話題を逸らすようにトーンを変えた。


「西条だよ西条」

「…………」