「まだ眠いからもう少しここにいる」
と再びベッドに横になったユリを
保健室に残し
俺は自分の教室に向かった。

静かな廊下を一人で歩いていると
馬鹿みたいに罪悪感に襲われてきた。


乱れたベッドと
自分の服を直していた俺に
ユリはシャツのボタンを止めながら

「何かあったらまた相談にのるわよ」と
まだ余韻が残る顔でやさしく言うから
俺は自然と頷いてしまった。


これからも悪いってわかっていながら
逃げるようにアイツを抱くんだろうか。

その場かぎりの快楽を求め
ユリの優しさに甘え続けるのか。


……クソッ。


イラついた気持ちをぶつけるかのように
おもいっきりドアを開けると
見慣れたクラスメイト達の視線。


「コラ藤ヶ谷〜遅いぞ〜」

「……あれ?山ビン
今生物?
つーか今何現?」


わざとらしく眉間にシワを寄せながら
教室内に入ると

クスクスとした笑い声と
白衣を着た
山崎先生(あだ名は山ビン)の呆れた顔。


「もう4限だぞ。
しかもあと15分しか時間ないぞ。
全く何しに学校きてんだか」


ブツブツと文句を言い出した
山ビンの説教を適当に聞き流して
俺は自分の席についた。

先週末席替えをしたばかりの俺の席は
ラッキーな事に窓際一番後ろ。

俺は全く授業を聞く気がないまま
机に肘をついて
ぼんやりとグランドを眺めていると
前の席に座る浩がクルッと後ろを向いた。