「……ユリ?」

「そんな冷たい言い方
しなくてもいいでしょ」


その瞳に映るのは
少しの怒りと深い悲しみの色。

――そしてそっと額から手が離された。


言葉が足りなかった、か?
あーもう仕方ねーな。


俺はクシャクシャと髪をかき上げて
ユリから視線を少し外した。


「だって嫌なんだよ。
元カノがダチと付き合うとか
しゃれになんねーだろが」

「何でよ。
リョウ今まで関係あった子
そんな風に言った事ないじゃない。

“別に向こうが誰と何してようが
俺はどーでもいい
そのかわり俺も勝手にさせてもらうし”
とか……超最低男」

「お前普段鋭い癖に
何でこんな時だけ鈍感なんだよ。

……だって俺が
真面目に女と付き合ってたのって
考えてみればお前とだけだし
他の女とはどっか違うんだよ。
ほら、なんつーか……わかんだろ?」


ユリは二、三回驚いたように
大きな瞳をバチバチと瞬きをした後
嬉しそうにハニカんだ。


「ふふっ、そうね。
それなら私も同じかも。
やっぱりリョウは他の人とは違うわね」

「あっ、機嫌直った。
へー、そうなんだ
珍しく素直じゃん。
それは初耳なんだけど。

さすがのユリでも
初めての男は特別とか
かわいいとこあるじゃん」

「うるさいわね。
リョウだって同じでしょ?
そっくりその言葉お返しするわ。

ねえ、こんな話したって
お互い恥ずかしくなるだけだから
やめましょう」

「それもそうだな」


顔を見合わせて
吹き出したように笑い合いながら

俺はごく自然に
目の前の細い腰を引き寄せ
ユリは両手を俺の髪に通し優しく撫でた。