その後煙草を吸いながら少し下を向いて
目元に前髪が掛かる顔を見て
思わずビールを吐き出しそうになった。


「ん?どうした」

「いや、何でも」


焦って口元を拭う。

今の伏し目がちなユウキの顔
前髪と顎のラインが
カズマにかなりそっくりだった。

よく考えたらほのかに香る香水も
カズマの愛用してるものと同じだ。


……はーん。
そっかそれでアイツあんな事。


考え込んでしまった俺を気にしながらも
ユウキは煙を吐き静かに話し始めた。


「えっと、リョウだよな?」

「あっそうです」

「リョウは俺らのライブ
見たの初めて?」

「はい
ダチがDown Setの凄えファンで
ファンクラブ入ってるけど
チケット取れなかったって」


もし取れたら行こうぜって
カズマに言われてたから。


「そっか、それは悪かったな。
そんな事なら
今日そいつも呼べば良かったのに。
アキ何にも言わねーから」

「いや、アキも
知らなかったみたいで」

「そっか、じゃあ次回は
そいつも連れてこいよ。
夏にツアーやると思うし。
……んでさ、リョウ。
今日のライブどうだった?」

「は?どうって?」

「だから感想だよ、感想。
正直に言えよ」

「正直に」


まさかそんな事聞かれると思わなかった。

ぶっちゃけ彼らのライブを見て
思うことはあったけど
本人には絶対言えねぇ事だし。

何とかこの話題をそらそうと思って
ヘラリと笑って見せたけど

ユウキは歌うときにするような鋭い目で
俺をジッと見たまま反らさないから
これは逃げられねぇと覚悟を決めた。