10畳程の部屋の中は
鏡と椅子、テーブルとソファーが
並べられただけのシンプルな作りで

ベージュのソファーに座ったユウキは
俺達の姿を見ると
煙草を灰皿に押し潰しながら
立ち上がった。


「アキ、悪いなわざわざ。
……会うの久々だな」

「そう かもね」

「お前また痩せたんじゃねえの?
どうせろくに寝ねえで
バイトばっかやってんだろ」

「だって仕方ないじゃん」

「まだあの金使ってねーのかよ」

「使えないよ」

「使えよ。
アイツの意志だ」


その言葉に唇を噛み締めて俯くアキ。

……訳のわからねえ会話だ。


無言でその場にたたずむ俺に
ちらりと視線を向けたユウキは
悪ガキみたいな顔でニヤリと笑うと


「おーイケメン!」


と一言。

てめーにだけは言われたくねぇとか思って
ひきつったような笑いを返すと
「悪ぃ悪ぃ」と口元に拳を寄せながら
笑いをかみ殺しつつ俺の正面に立った。


「昨日ライブだったんだろ?
悪いな疲れてるとこ呼びつけちまって。
今日を逃したら
しばらく会えそうもなかったからさ」

「別に」


何なんだ一体。

そこまでして会いたかったのは
俺か?アキか?

しかも俺らの事
ドコまでコイツは知ってんだ。


警戒したように目を細めた俺に
全く気付いてない様子のユウキは
缶ビールを差し出しながら


「とりあえず立ち話も
アレだし、座れよ。
そういえばアキ。
ケンがお前に凄え会いたがってたから
行ってやれよ」

「ほんとに?
じゃあ行ってこようかな」


いきなり二人っきりにするとか
勘弁してくれねーかな!?


なんてかなり女々しい事を考えながらも
何もいえずに
部屋から出て行くアキの背中を見送った。

何となくコイツの意図がわかったから。


つまりはアキに聞かれたくない話が
あるってことだ。