真っ白い廊下を歩きながら辺りを見回すと
忙しそうにバタバタと駆け回る
スタッフらしき人達。

通路の端のテーブルには
誰かのさし入れらしき
食い物や山のように置かれ

その横には
雑誌社やテレビ局から送られたらしい
色とりどりの花がずらりと並ぶ。


自販機の横の喫煙スペースでは
スーツをきたお偉いさんっぽい二人組が
煙草片手に難しそうな顔で立ち話。


“ケータリング室”と
書かれた部屋を通りすぎると
そっから先はメンバーの楽屋らしく
ドアの横には
それぞれの個人名が書かれていた。


やっぱこのクラスになると一人部屋なんだ。


なんで暢気なことを考えながら先を行くと
1番奥の部屋のドアの横に
“Down Set ユウキ様”と書かれた紙。

それを見上げたアキは
迷う事なく小さな手をあげて
ドアを数回ノックした。

すぐに内側から返事があって
俺の心臓が再びドクンと鳴った。

歌声よりも低く
でもハッとするほど響く声。


「誰?」

「あたし」

「おー入れ」


そんな短い言葉だけで通じんのかと
愕然とした気分になりながら
開かれたドアの中に
アキの後に続いて踏み込んだ。

開き直ったとか言いながら
履いてたNIKEのスニーカーが
鉄の塊みたいに重たくなったような錯覚。

レベル1で装備はヒノキの棒
そんな丸腰状態で
ラスボスの部屋に飛び込むような
もうどうにでもなれって気分で
俺はさらに足を進めた。