そんな俺に更なる試練。


ライブ後アキに
「まだ付き合って欲しいとこが
あるんだけど」
と手を引かれるままつれてこられたここは
俗に言うバックステージ。


先程彼女が鞄から取りしたラミカードには
キラキラと赤く光るバンドのロゴと
“ALL AREA”の文字。

意味はあらかた
“ドコのエリアも入ってオッケー”
ってことだろう。


それだけで二人の
親しい関係が窺い知れる。


いったい何だって言うんだ。

俺とユウキって奴を会わせて
いったいどうしたいんだよ。


「リョウ、私の彼氏のユウキ」

「はじめまして
アキがいつもお世話になってます」


なんて二人並んで言われたら
その場でしゃがみこんで頭を抱えるか
ダッシュでその場から逃げるか。


そんな事したら俺かっこ悪すぎるだろ。

――っとまてよ。
俺を連れて来いって言ったのは
ユウキって奴の方だ。

天下のロックスター様が
俺にいったい何の用だ。

コイツにちょっかい出してる事知って
けん制でもする気かよ。


きっと用事があるとか
適当に言いくるめて
帰ることは出来るんだろうけど

心のどっかではユウキって奴に
直に会いたい自分がいるのがわかった。

いったいどんな奴なのか
自分の目で見て確かめたかったんだ。

コッチから勝負でも挑んでみるかな。


勝ち目なんか全くないのに
そう開き直ったとたん
変な緊張感が抜けていく。