照明の色が変わり
ユウキの持つギターの色が光の加減で
アキの物と同じ
濃紺に変わったように見えて
思わず胸が痛くなる。


記憶をめぐらせると
アキのやけに年季の入ったギター。
ネックの後ろに掘られていたのは
『Y.M』の文字。


――ユウキ ムトウね。


ハッ!!
マジでイニシャルなんてありえねぇ。

どっからどう考えても
あのギターはもとは
このユウキって男が使ってたもんだ。

真希に壊されそうになったあのギター。

それを守った後にした
ほっとしたような、泣きそうな彼女の顔が
思い出したくないのに
いちいち頭に浮かんできて

どうしようもなく
やりきれない気持ちになった。


そんなどん底の俺に
さらに突きつけられた現実。


アンコールを二曲終え
メンバーがステージからはけていく瞬間
ユウキはピックを客席に投げながら
チラリと視線をこっちに向けた。


――そう俺の左隣に。


そしてテレビでは見せたことないような
やさしげな笑顔を一瞬だけ見せると
そのままステージの奥に消えていった。

反射的に顔を左側に向けた俺の目に
飛び込んできたのは
うれしそうにはにかんだアキの顔。


――その顔には見覚えがある。


前にアキとイチャついてた時に
邪魔された携帯電話。

その通話中の彼女の顔と今のそれは
全くもって同じ種類の物だった。


これはもう決まりだ――。


アキの“好きな奴”は
『Down Setのユウキ』だったんだ。


……見なきゃ よかった。
そうすればこんな
心が締め付けられるような
裏切られた気持ちにならなくてすんだのに。

っていうか
そうならそうと早く言ってくれ!

しかも何こんな広い会場で
アイコンタクトとかかましてんだよ。


あまりの衝撃的な出来事に
鈍器で頭をぶん殴られたような
精神状態に陥った俺は

こんな八つ当たりみたいな醜い嫉妬で
頭の中がどうにかなりそうだった。