ラブソングとかやられたら
どうしようかと思っていたら
始まったのは
それと真逆とも言うべきか

“Auto Machine”という
現代社会を風刺った歌詞の
かなり激しいメガロックソング。


裏拍を刻むドラムに重ねて
ボーカルの波紋のような低い声が
地面を這うように広がる。

そんな前奏が終わった後は
もう打ちのめされるしかなくて

特にボーカルのユウキの存在感は秀逸で
激しくギターを掻き鳴らしながら
全力で歌う姿に
会場中の誰もが目を反らせずに
虜になっているようだった。


コイツ
Down Setのフロントマンの
『ユウキ』こと“武藤 裕紀”。

バンドのほとんどの曲の作詞と作曲を担当し
どんな楽曲でもサラリと歌いこなす
屈指のボーカリスト。

いまや日本で敵なしと言われている
モンスターバンドのDown Set。

そんなバンドをここまでっかくしたのは
はっきり言ってコイツの力に他ならない。

ボーカルはそのバンドの顔だし
注目が行くのは当たり前なんだけど
コイツの場合はその限度を超えてる。

“カリスマ性”とか形容するのが
正しいんだと思うけど
歌を歌うために生まれてきたような人間。

コイツが歌うと、
どんな曲でも自分のカラーに
染め上げてしまう。

全身全霊とも言うべきか
まるで自分の命や魂を
削り取るかのように歌い

聴く人をズタズタに切り裂く
攻撃性を持ちながら
どこか神聖さが感じられるような
そんな不思議な歌声。

しかも天は二物を与えずとか?
そんな言葉はこいつには嘘っぱちで
180センチを超える身長に
長めの前髪から覗く意思の強そうな目。

……なんつーか
ぶっちゃけ顔もかなりよくて
女がキャーキャー言うのも納得なぐらい、
凄く整った顔をしていた。


ドコにも欠点なんかないような
男なら誰もが敵にしたくない男

――ユウキってのはそんな奴だ。