いったんステージからはけたメンバーは
“もっと”と渇望する
観客達の大声援をうけ
再びその姿をあらわした。


そして四人の中でラストに登場した人物に
俺の目は釘付けになった。


そいつは満足そうに客席を見ながら
力強い足取りで
ステージの中央に向かって歩いてきた。


男と女、両方の叫び声が彼の名前を呼ぶ。


マイクスタンドの前に立ち
スポットライトを一身に浴びる
長身のシルエット。


その手に持っていたのは
Ibanez Custom AXの
木目調のギター。


――アキの持つそれと
同じ型のギターだ。


やっぱり、こいつが。


実は1番
そうであってほしくないと願った奴。

でも何となくコイツだと予測はあった。


――ボーカルの『ユウキ』は
俺の目の前に立つと

マイクスタンドに取り付けられた
ピックを一つ掴み
余裕そうな顔で後ろをちらりと振り返り
合図のような視線を送った。