呟くように言った
アキの言葉を聞き漏らさずに
問い詰めるように発した俺の質問は

入口の側に立つスーツを着た係員の
「もうすぐ開演になります」
ってアナウンスに掻き消さた。


少しだけ急いだ様子のアキに続いて
ロビーから会場の中に入る。


客席はもうほとんど埋まってて
期待と興奮の混じった
ザワザワとした客の話し声。


会場の構成は180度形式。

ステージの後ろには入口と同じ
黒地にシルバーの文字で
バンドのロゴがプリントされた
超巨大な横断幕が揺らめいていた。

そしてそれに向かい合わせるように
アリーナ、1階、2階と
無限に広がる観客席。


チケットを確認しながら通路を進む
アキの後ろ姿を見ながら
段々と視界に広がっていく巨大なステージ。

……つまりはどういう事かって?

俺らが到着した席は
アリーナ席真ん中の前から5列目。

目の前には天井に向かって
真っすぐに立つマイクスタンド。

その大きさが
“ここ”とステージの近さを
嫌でも俺に実感させた。