……ちょっと待てよ。


その文字を見たとたん
焦りみたいな変な感情が
頭の中を駆け巡る。


俺は何かすげぇ重要な事を
見逃してた気がする。


最近は色々ありすぎて
他の情報に意識がいってたから
全く気付かなかった。


アキは俺のすぐ前で
鞄からチケットらしき物を二枚取り出し
入口に立つ係り員に渡していた。


その後は持ち物検査があって
俺はデニムのポケットに
財布と携帯と煙草だけ突っ込んできたから
そこを素通りして
少し離れたところで彼女を待つ。


やがて俺の方に駆け寄ってきたアキに
ホントは別の事を聞きたかったのに
口から出てきたのは
当たり障りのない、本心でない言葉。


「Down Setなら
カズマとかミヤとか誘えば
喜んだだろうに。
あいつら熱狂的ファンだぜ」

「ふーん、そうなんだ。
……でもリョウの事
連れて来いって言われたから」

「……誰に?」