…………。

……ってことは――


これってバンドに入ってくれるって
意味だよな?


最後の方の会話を思い出し
アキの言葉の裏の意味を考えると
どう考えてもその答えしか浮かばない。


「……やっと、だ。」


驚きながらもあまりに嬉しくて
頭で考えるより先に身体が勝手に動いて
隣に立つアキの身体を両手で抱きしめた。


「リョウ?」

「悪い。
今は何も言わないでこうさせてくれ。
頼むから」


俺の顔をチラリと見たアキは
これ以上は何も言わず
ステージの方を向き続け

俺はそんな彼女の細い身体を
横から抱きしめながら
静かに目をつぶった。


途中何度も諦めそうになったけど
諦めなくて良かった。


――これでやっと前に進める。


ステージでは例の“ギャギャギャ”
ソングが始まり
それに応えるように
フロアには怒号の歓声が広がった。


この曲を聴くたび今の気持ちを
思い出したりするんだろうな。


最高だ――!


それに……


「アキ」

「ん?」

「その服、似合わないな」

「それ、さっきも聞いた」

「あと、
お前の服からカズマの匂いがする。
何だかアイツを抱きしめてるみたいな
錯覚がすんだけどどうしたらいいんだ?」


しばらく沈黙した後
二人こらえ切れなくなって笑いあう。


曲と同じように
この青いユニフォームを見るたび
今の感情が蘇ってくるんだろうな。


この痺れるような感動と
熱く燃えたぎった心臓を――。