PM7:58

ステージ袖....


アキの手を引いて向かったのは
熱いパフォーマンスをする
DeFautのステージ袖。


見えるのはスポットライトの下
スタントマイクの前に立ち
ギターをかき鳴らして歌う松さん。

彼のシャウトに対抗するように
こぶしをかかげて飛び跳ねる観客達。

その中にカズマの姿が見えるのは
気のせいか?

アイツ、ライブ前に何やってんだよ。

……まあそれも仕方ねーか。
DeFautの演奏を聞くと、
自然と身体全身を揺らして
一緒に叫びたくなるんだ。

曲は進み、ハードな曲調から一転
何ていうか
エロティックな、ムーディーな感じ?

ピンクの照明の中
ささやくような歌声。
あまりにささやきすぎて
何言ってんだかさっぱりわかんねぇ。


でも後で松さんに聞いたとしたら
きっと彼はこう言うだろう。

「究極のエロティシズムを
表現した結果こうなった」
とか何とか。


その曲調と彼らの風貌が
余りにミスマッチで
ミスマッチ過ぎて
逆にはまってんじゃねえかとか
錯覚すら覚える。


そんな彼らの作り出す音楽に
目が離せないまま
真っ直ぐにステージを見ていると

俺の横に立つアキが
引き寄せられるように
一歩ステージに近づいた。


「凄い、このバンド何ていうの?」


やっぱりだ。
コイツも好きになる音だって
何となく予感があった。


「DeFaut」

「DeFaut……欠陥か。
凄くらしいバンド名だね。
天邪鬼な感じだもん」

「へー。
DeFautってそんな意味だったんだ」

「リョウ、知らなかったの?
DeFautはフランス語で
“欠陥”って意味だよ」


フランス語かよ。
英語のバンド名じゃないところが
またらしいって言うかなんつーか。


……ってちょっとまてよ。


「お前何でフランス語なんかわかんだよ」

「何でも」


またそれか。
謎ばっかだなコイツ。
……まあいいや。
その辺は今度まとめて問い詰めるとして。