「え!?今何て言ったの?」

「だから、今日の俺らのライブ
1曲目に“NOW”やるからお前歌えよ」

「ヤダ!そんなの出来ない」

「どうして?」

「…………」


黙り込んでしまったアキの顔を
変わらず見つめながら
やわらかい口調で問いかける。


「アキ、俺が渡した曲聴いたか?」

「……聴いた」

「気に入った?」

「…………」

「じゃあ質問かえるわ。
何回ぐらい聴いた?正直に話せよ」

「……何回も」

「どう思った?」


しばらく沈黙が続いて
やがて何か心に決めたみたいに
アキは静かに話始めた。


「……最初は驚いて
それからかなり頭に来て
ムカついてテープ
壁に投げつけようとしたけど
……出来なくて。

“俺のが凄えだろ”って
リョウが言ってる気がした。

でも基本的な曲のベースは
変えてないから不思議な気分で
こんな風に展開する方法もあるんだって
悔しいけど、凄いなって。

どれで曲聴いたままいつの間にか寝てて
今日寝坊した」

「曲聴いてて
歌いたくならなかったか?
お前のために作った曲だ」

「……なった」

「じゃあ歌えばいいじゃん」

「……でもっ!」

「何だよ、夜通し聴いても
まだ曲覚えてないとか?」


わざと意地悪い言い方してみたり
負けず嫌いなこいつの性格を
逆手に取る目的で。


「覚えてるよ!
バカに、しないで」

「嘘だよ、わかってる。
それにお前は今日ここに来た。
約束しただろ?
“バンドに参加する気なら
俺らのライブに来い”って。

って訳だから
お前はもう俺のバンドの一員。
よって強制参加。わかった?」