それから俺は楽屋で
ライブ後用に持ってきた服に着替え

アキは一先ずカズマの服を借りて着てて
濡れた服はユリがコインランドリーへ
乾かしに行ってる。


そんなわけで今こうして二人きり
楽屋で身支度を整えてるんだけど……。


ちなみにカズマ達はというと
DeFautのステージを見たいと
そろって楽屋から出ていってしまった。

でもそれは裏では
俺に気を使ってくれたんだと思う。

だってまだコイツに
今日ステージに上がらせるつもりだって
伝えてなかったから。


髪もすっかり乾いた俺は
ドライヤーを前の台に置き
鏡ごしにアキの顔をみつめながら
どう話を切り出そうか考えていた。


しばらくして
ドライヤーのスイッチを切ったアキは
ユリに借りた化粧ポーチを開けながら
鏡の中の俺を睨み付ける。


「何?
そんなに見られたらやりにくいんだけど。
言いたいことあるなら言って」

「……その服似合わないな」

「…………」

「ふはっ、ごめんごめん。
本当は別の事言おうと思ってたけど
余りにお前の姿がアレで
口が滑った。
あー悪かったって。
だからそんな顔すんな」


我慢しても込み上げてくる笑いを
口元に手を置いて噛み殺し
身体を横にむけると


アキは変わらず前を向いたまま
カズマに借りた服をつまみ
鏡の中の自分を見つめながら
拗ねたような複雑な顔をした。


「自分でもわかってるから
イチイチ言わなくていい」

「そんなに落ち込むなって。
こんな服をもってきた
カズマが悪いんだから」

「別に落ち込んでないから」