PM7:37

再びCOUNT ZERO楽屋....


耳に聞こえるのは低い機械音×2と
かすかに届く歓声と楽器の音。

狭い部屋の片隅で
備え付けの鏡の前に並んで座る俺とアキ。


二人の手に握られてるのは
ギターでもべースでもなくドライヤー。

そして度々鏡越しに合う視線。


………意味不明だろ?


実は俺もまだいまいち
この状況を飲み込めてない。


ドレッド店長が言ってたけど
俺らのライブ予定時刻は7時半。

今はその時間を約10分ほど経過している。


もしかして間に合わなかったとか
そんな予想をしてるかもしんねぇけど
実はそうじゃない。


びしょ濡れの俺らがここについたのは
7時19分の事。

ユリのバイクを裏の駐車場へとめ
搬入口に向かった俺らが見た物は
そこでタオルを抱えて佇む
ユリ、ケンゴ、カズマ、ケイタの姿。


ケンゴは俺とアキの姿を見ると
ニヤリと口元を緩ませ
ユリはアキにタオルを渡しながら
「こんなにさせて」と
俺に向かって呆れた表情を見せた。

俺としてはそのままの姿で
ステージに向かおうと思ってたんだけど

――だって台風の中で演奏した
バンドだっているんだ。
それに比べたら俺らは大分ましだろ?
アキには気の毒だけど。

すると俺の頭にタオルを被せながら
カズマが口を開いた。


「DeFautが演奏の順番
変わってくれるってよ」