「かなり薄手だけど、
ないよりはましだからさ。
無茶させて悪ぃけど」

「でもリョウは?
Tシャツじゃこの雨の中はキツイよ」

「大丈夫。
俺、着替え持ってきてるから」

「は!?それってどこにあんのよ」

「……ライブハウス。
あ〜もうアキ、頼むから大人しくね。
マジで時間ねぇの」


まだ抗議をしたそうなアキの腕を引き
土砂降りの雨の中に飛び出した。


大粒の雨がすぐに服にしみこんで
全身をずぶぬれにする。


ぶっちゃけ、かなり寒いけど
そんなことはかまってられずに
予備のメットを渡しながら
彼女を後ろに座らせた。


アキの金色の髪もしっとりと濡れ
水も滴る何とかとか
言ってられないぐらいの大洪水っぷり。


「こんな中でバイクとかマジで悪いけど
少しだけ我慢してくれな。
もし風邪とかひいたら
直るまで看病するから」

「な、何いってんの!?
……っていうかドコ、行くの?」

「お前知ってて聞くなよ。
ライブハウスに決まってんだろ。
安全運転しながら飛ばすから
しっかりつかまっとけ」



そしてほのかな街灯のみが光る
暗闇の中へ
メタリックブルーのバイクは
勢いよく飛び出した。


……恋の力ってすげぇ。

コイツと触れてる背中が
やばいぐらいに
熱くなってるがすんですけど。


とか不謹慎なことを考えながらも
神経を集中させ
雨の中を猛スピードで駆け抜けていった。