アキがこんな風に悲鳴をあげたのは
説明するまでもなく
彼女の身体を俺の左肩の上に
二つ折りに担ぎあげたから。

そして驚いてジタバタすのに怯む事なく
その腰を少し強めに押さえながら

しゃがみ込んで玄関に置いてある
グレー地にピンクのラインが入った
ハイカットのスニーカーを掴むと
そのまま玄関の外に飛び出した。

ガシャンと扉が閉まる音を背中に聞き
急いでエレベーターに向かう。

その途中でも抵抗を続けるアキ。


「リョウ!何すんのよ!
下ろしてってば!!」

「だから何度も言ってただろ。
誰が来たのか確認もせずに
ドアを開けたらあぶねーだろって?
今日が三回目だから自業自得だな」

「何めちゃくちゃな事言ってんの?
ちょっと玄関!鍵かけてない!!」

「あぁ悪い。
でも戻る時間ねぇし、もし何か取られたら
俺が犯人見つけて
全部取り返してやるから。」

「そういう問題じゃない!
早く下ろしてくれないと
大きな声出すよ」


やっぱそうきたか。
ちょっと卑怯な手だけど……。


「そんなに叫びたいなら
いくらでもそうすればいい。
でもきっと人が大勢集まって来て
その後は当然警察がやってくんだろ?

俺は誘拐罪?
それかストーカーかなんかで
補導もしくは逮捕されて
当然学校は退学。
んで鑑別に送られるか
精神科に入院。

そうなったら俺の人生
めっちゃくちゃだ。
原因を作ったのはお前。

それが耐えられるなら
悲鳴上げるなり叫び声を上げるなり
何しても俺は全然かまわねえよ」


すると暴れるのをビタッと止めて
悔しそうに唇を噛み締めて俺を睨み付けた。


「そんな言い方はずるい……」