PM7:02

市内某マンション....


いつ雨が降ってもおかしくないぐらいの
真っ暗な空の下

世界選手権を何度も優勝した
某有名イタリアンライダーバリの
ドライビングテクニックを駆使して
込み合う車の群れの中を
400ccのバイクで縫うように走り抜ける。

そして思っていたより格段に早く
アキの家のマンションに到着した俺は

エントランスの前に
バイクを乗り捨てると
急いでエレベーターに乗り込んだ。


行き違いになってたら
……そん時はまた考えるか。


そんな事を思いながら
アキの部屋のドアの前に立ち
インターフォンを押す。

しばらくたっても何の音沙汰もなくて
焦りながらも再び
インターフォンを拳で5回ほど叩いた。


機械の不協和音が響いた後
バタバタとこちらに近づいて来る足音。


は!?
マジで家にいるとか勘弁してくれよ。


安心だか怒りだか
訳のわからない気持ちに襲われて
その場にへたり混みそうになりながら
何とか気持ちを落ち着かせた。


迎えに来てほんっとよかった。


そしてゆっくりと開いたドアの隙間に
身体を素早く滑り込ませると
無断で玄関に侵入する。


「きゃあ!リョウ。
何?何でここにいるの?」


“何で?”じゃねえよ
込み上げてくる苛々を抑えながら
悲鳴を上げた西条を見下ろし
とびっきりの黒い笑顔を見せる。


「お前がいくらたっても
壁をぶち壊してこないから
待ち切れなくなってこっちから壁を
乗り越えちまったじゃねーかよ」

「えっ!?」

「それとアキ、何度も言うようだけど
誰か確認しねーで
ドア開ける癖、早く直せ」

「何言ってんの?
アレ!?今何時?」


焦って意味不明な事を聞いてきた
彼女の質問をシカトして


「あのさあ、三度目の正直って
どんな意味かわかる?」

「え!?
わかるけど……って
きゃあ!!ちょっと待って!
何すんのよ!?」