そう、女バイカーの正体は元カノのユリ。


ライブのチケットそういえば渡してたな。

驚いた。
コイツバイク乗れたんだ。
どんだけ男前なんだよ。

……でも丁度いいところに来たな。


そう思って自然と口元が緩んだ。


「ねぇ、リョウ??聞いてる?
駐車場どっかにないの?
この辺詳しくないから
わからないんだけど」

「あぁ悪ぃ。
いきなり超絶いい女が
目の前に現われたから
思考回路がショートしてた」

「そんな事言って
あんた何かたくらんでるでしょ」


切れ長の目を鋭く光らせ
俺の顔を睨み付ける。


コイツもたいがい鋭いな。
ってか俺が解りやすすぎるのか?


「何でもいいからさ
俺が駐車場止めといてやるから
とりあえず降りろ」

「え!?ホント?
リョウって相変わらず損得なく
女にやさしいわね」


そう嬉しそうな声を上げると
エンジンをかけたまま
バイクから降りるユリ。

俺はメットを受け取りながら
彼女の代わりにバイクに乗り込んだ。


ユリもまだまだ甘いな。
損得なんてあるに決まってんだろ。


「ユリ、駐車場は
このすぐビルの裏にある。
でもその前に少し借りるな」

「え!?ちょっと待って!
どこ行くのよ?」

「ついでにケンゴ達に伝言頼む。
“アキ迎えに行って来る、
時間までには絶対に戻るから”って」

「は!!!???
それ、どういうこと?
説明しなさいよ!リョウ!?」


叫ぶように言ったユリの言葉を
最後まで聞くこともなく
俺はメットを素早く見につけ

後ろを確認すると
そのままバイクを走らせた。


そうだ。
待つのが嫌ならこっちから行けばいい。

欲しいものは遠慮なんかしねぇで
自分で手に入れる。


――それがきっと一番俺らしいんだ。