驚いて視線を上げると
茶色い緩く巻かれた髪
グロスの光る唇、そして谷間。

思わず苦笑いしながら


「真希。
いきなりどーした?」


だってさっきから
そのボリュームのある胸を
俺の腕に押し付けてきてるし。

コイツのこういうとこ相変わらず?


腕から逃れようと立ち上がった俺を
大きい瞳で見上げた真希は

自分の背後を気にしながら
細い眉を吊り上げた。


「だって今あそこの女が
リョウに声かけようとしてた!
こんなとこで一人で何やってんのよ!
危ないじゃないのよ!!」


何だそういうことか。

でも女に守られたとか、
初めてなんですけど。


「いや、俺男だから。
そんな心配には及ばないし。
でもサンキューな」


真希に笑顔を向けながら
さりげなく彼女の背後を見ると

いかにもギャルって感じの二人組みが
真希のことをジロジロ見ながら
階段の方に向かっていった。

真希はその女達を威嚇するように睨み付け
その姿が見えなくなると
スルリと俺の腕を放し
「あー焦った」とつぶやいた。


……コイツたくまし過ぎる。