「いや、俺のバンドのベースの奴と
一緒だったんすけど
“会場の外にかわいい子がいるー!!”って
さっきナンパしに行っちゃいました」

「へーそっか
そんなかわいかったんだ……
ってそうじゃなくてミヤは?
一緒に来たんじゃないのか?」


ケンゴの事
こっそり探りいれようと思ったのによ。

丁度アイツ、ケイタと外出てるし
タイミング的には今しかねぇ。

そんな俺の魂胆をぶち壊すべく
タケから衝撃の事実。


「ミヤなら今日来ないっすよ!
Down Setのライブ行ってるんで」


……は??
今なんて言った?


「Down Set?
ライブってどこでやってんの?
東京まで見に行ってるとか?」

「えぇ!?アニキ知らないんすか!?
昨日今日明日って3日連続で彼ら
地元で凱旋ライブしてるんすよ」


地元で……マジかよ。
そんなの全然……


「……あーー!!知ってた、知ってた。
そういやカズマが3ヶ月前ぐらいに
騒いでたな。
チケット取れなかったーって」


カズマの方に振り返ると
その時の悔しさを思い出したように
唇を噛み締めながら言う。


「そうそう
ファンクラブ入ってるのに取れねぇって
どう言うこと!?って感じだったんだよ。

そっかミヤチケット取れたんだ。
うらやましーなー。
俺外れたから詳しい日程ド忘れしてた」

「って事は、ミヤ俺らのライブより
Down Setを選んだわけか。
当たり前だけど何か悔しいな」


そう口にしながら
さっきのフロアでの会話を思い出す。

ケンゴ確か“Down Setに八つ当たり”
とか言ってなかったか??

なるほどそう言うことか……。


確かに好きな女が
他の奴のライブを優先したら
ふてくされるわな。


ケンゴの奴意外とかわいいとこ
あるじゃねぇか。

アイツ……ミヤにマジだな。

この事実、どうケンゴに
つっこんでやろうかとか
色々と頭の中で考えてにやけてる俺の姿を

タケ、松さん、カズマは
怪しげに見てたんだけど
俺はさっぱり気付かなかった。