PM5:32

COUNT ZERO 客席フロア....


俺らのステージでの打ち合わせも済み
各自好きなようにすごす中

再び会場の様子を見に行くと
ステージでは今日一番最初にプレイする
“ニノベイダー”が打ち合わせ中。

そしてその様子を客席の後方に立ち
腕を組みながら真剣に見るケンゴの姿。

俺はゆっくりと黒いブーツの踵を鳴らし
隣に立ち、同じようにステージの方を向く。


「何?そんなにいいバンドな訳?」

「別に、青春真っ盛りの甘酸っぱい
メロコアバンドってとこやな。
俺らの敵やないな」

「相変わらずはっきり言うな。
こいつら俺らの一個下だろ?
さっき挨拶したとき言ってた。
今日が初ライブだってさ」

「はーん、そやったん?
それならまあまあやな」

「ふーん」

「……何やねん。
にやにやして」

「珍しく甘いな〜と思って」

「俺かて鬼やないわ。
バンドやりたての奴らにまで
そんな厳しいこと言わん。
サビもキャッチーで聞きやすいし
今後に期待ってとこやな」


そしてしばらく黙って音に集中する。

確かに技術面はまだまだだけど
どこか原石的な光る物を感じる。


「最近じゃこの辺でも
バンド始める奴増えてるとか聞いたな。
レベルも結構上がってるらしい。
Down Setの影響で」


「ああ、せやろうな。
地元の奴らがあんなに成功してたら
次は自分がって思うしな。

デビュー以来出す曲全部オリコン一位。
ツアーやれば毎回観客動員数更新。
そんなに大衆受けする音楽やあらへんのに
凄いことやな」

「……さっきはあんな奴ら
対したことないって言ってたのに」

「アホか、さすがの俺もDown Setの
実力は認めてる。
アレは、ちょっとした言葉のアヤと
個人的な八つ当たりや」