思わず影でガッツポーズ。

まさかこんな無茶な要求通るなんて、
俺もだけどこいつらも相当アホだな。

にやけてくる顔を我慢しないでいると
カズマが俺に向かって釘をさした。


「ただし、西条がきちんと
来たときの場合だかんな」

「それはわかってるよ。
当たり前だろ」

「だってお前ら
歌なしのインストでやるとか
急に言いそうだし」

「あ〜それも悪くないけど
今回は止めとくよ。
“Now"はそういう曲作りしてないし
さすがにそんなの客には
聞かせられねぇよ」

「それならいい」


安心したようにカズマが言い
それぞれ再び椅子に座った時
こらえきれなくなったような
誰かの笑い声。


「どーしたケイタ?」

「あ〜うける。
黙って聞いてたけど、凄いよ
マジでやるなんて、
お前ら相当バカ!!!
集まるべくして集まった
三人って感じがしたよ。

しかも人が甘い蜜に誘惑されて
あり地獄に引きずり込まれる過程を
目の辺りにしたっつーか何て言うか。
ホント面白いよね。

俺的には最後に持ってきたほうが
盛り上がるって思うけど
何で最初なの??」


まだ笑いが残る口調でそう尋ね
綺麗な目を俺に向ける。


「あ〜、何つったらいいのかな。
言ってもアキはまだバンドで歌った経験
ほとんどないだろ?

だからさすがにケイタの後じゃ
やりにくいだろうって思って。

だってお前歌上手いのはもちろんだけど
客とのコミュニケーションってか
盛り上げたりすんのも得意じゃん?

それにお前バンドで歌うの今日が最後だろ。
だからやっぱ、ラストは一緒に
ステージに立ってたいしさ」


気はずかしいながらそう洩らすと
今度はケイタが顔を赤くしてうつむいた。


しばらく誰も何も言わないままでいると


「……俺らライブ前に
お互いを褒めあって何やってんだろな?
第三者がきいたら
相当痛たたたって感じだよな」


しみじみとした声のカズマの言葉に
四人そろって頷きながら笑いあった。