しかも風呂上りらしい彼女の服装は
上はグレーのタンクトップ
下は黒のショートパンツ。

ほのかにシャンプーの香り。


……あ〜押し倒したいかも。


この前あんなことあったのに
俺って実は打たれ強い?


照れたように濡れた髪に手をやるアキに
半分本気で言ってみる。


「アキ、キスしていい?」

「は!?
いきなり何言ってんの!?
駄目にきまってんじゃん!」


上擦った叫び声をあげながら
アキは少し後ずさって
さらに顔を赤くする。


あまりに動揺するその姿に
こらえきれなくなって


「ははっ、悪い。
冗談だよ。
何もしねーからちょっとこっち来い」


左手を上げて手招きすると
警戒しながらも
ジリジリと近寄る彼女の手に

「これ差し入れ〜」といいながら
色んなものが入った袋を握らせる。


「何これ?」と
俺を見上げたアキに一歩近づき
サラサラの前髪を手のひらで持ち上げると

素早くおでこにキスをした。


暖かい感触と
よりいっそうの甘い匂いが広がる。

そして顔を上げて


「んじゃおやすみ〜。
戸締りはしっかりな」


と何事もなかったかのように
それだけ言うと
おでこを押さえて固まるアキに
背中を向けた。


廊下を歩きながらも
心臓のドキドキが止まらない。


ライブの前日……
大げさに言えば“運命の日”を前に
何やってんだとかつっこまれそうだけど
これだけで我慢した俺を褒めてくれ。