「なるほどね」

「何でそんなに
うれしそうなんだよ」

「やっと素直になったな〜と思って」


そうだよな
散々カズマとケンゴとユリとタケとかに
(って大分多いな)

アキとの事突っ込まれてたのに
ずっと否定してきたよな。


「自分でもこの気持ちに気付いたのは
実は最近の事だし。
それまでは心のどっかで
お前に遠慮とかしてたのかもしれねぇ。

あと、バンドに色恋沙汰
持ち込んじゃいけねぇって思ってたし」

「固いな。
しかもんな無意味な事を。
俺は振られたんだから気にすんなって
言っただろうが」


呆れたように眉を潜ませたカズマに
秘密にしてた決定的事実をぶつけてみる。


「それなら、
俺も振られそうになった」

「は?マジで!?」


ありえねえほどの大声。
うん、近所迷惑だ。

コイツの反応は
いつも俺の期待を裏切らないな。


「おう。
まぁ実際にはまだはっきりとは
言われてねぇから
首の皮一枚だけつながってる感じ?」

「信じられねぇまさかお前まで。
アイツ魔性の女だな」


“魔性”とか
アイツとは一番縁遠い言い方に
思わず吹き出す。


「ははっ、だったらどんなにいいか。
正真正銘の“天然”だから
なおさら、たち悪ぃよ」


「そうだな」と
お互い顔を見合わせゲラゲラ笑った後
目的のマンションに着いて俺は足を止めた。