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「甘い、甘すぎる」


金曜の夜。
遅くまでスタジオで練習した後
カズマと一緒に夜の道を歩く。


話の流れで
何となく真希との一件を話すと
CMのキャッチコピーをもじった
言葉を返された。


相変わらず寒いなコイツ。


「どういう意味だよ」

「そんな風にやさしくしたら
真希もお前への気持ち引きずるだろうが。
変な期待もたせちまったんじゃねぇの?」

「わかんねぇけどしょうがねーじゃん。
身体が勝手に動いたんだよ」

「またそれか。
西条のこと好きになってからのお前は
本能で突っ走ってばっかりだな」

「自分でもそう思う」


めずらしく素直になった俺を見て
カズマはギターケースを肩に担ぎ直して
小さなため息。


「まぁいいんじゃねぇの?
結構悪くないと思うよ。
一途でまじめなお前も。

基本はフェミニストだから
色んな女に優しくすんの
抜けきれてねーけど」

「お前なに目線だよ。
そっちこそ考えろ。
相変わらず色んな女と遊んでるらしいな?
ケンゴがぼやいてたぜ」

「しょーがねーじゃん。
俺女の子好きだし
気持ちいいこともっと好きだし」


呆れて何もいえねーっていうか
俺に言う資格なし。


アキに振られてしばらくは
女遊びを止めてたカズマだけど
最近はまた復活して
以前に輪をかけて遊びまわってる。


コイツは何も言わないけど
多分アキの事が傷になってるんだと思う。

一目ぼれから始まったけど
アイツのことを思うカズマの目は
いつだって真剣だったから。


「カズマ」

「何?」

「今までにこんな事なかったし
だからぶっちゃけ俺も戸惑ってて
きちんと話してなかったけど

同じ女を好きになってごめん」