「ごめん、俺好きな奴いる」

「うん、知ってる。
ただの自己満足。

だって去年から結構積極的に
アプローチしてたのに
かわされてばっかりだから
本気じゃないと思われてんのかもとか。
だから私の気持ち知ってて欲しかった」


カズマもアキに告る前
同じような事言ってたな。

“振られてもいいから
俺の気持ち知ってて欲しい”って。

あのときのアイツの
真剣な思いと強い覚悟を思い出した。


確かに真希の事適当に考えて
軽くかわしてばっかりだった気がする。

そんな俺の態度が
コイツの事ずっと傷つけてきたんだと
今更ながらに気付いた。


俺ってホントバカだ。


でも今その事を謝っても
コイツを余計に傷つけるから
それは出来ないけど……。


「そうだ真希。
あさってライブあるから見に来いよ。
チケット代は今回は特別サービスな」


ポケットの財布から
土曜のライブのチケットを二枚取り出し
真希の手のひらに押し付ける。


「行ってもいいの?」

「いいに決まってんじゃん。
別に用事あったら
無理にとはいわねぇけど」

「行く。
絶対行くから」


チケットを胸の前で握り締めながら
真希は今まで見せた事もない顔で
うれしそうに笑うと
そうやって、少し声を震わせた。