興奮のあまり
俺の胸倉をつかみ掛かる勢いの浩を
何とかかわし
「飯買ってくる」と教室から逃げ出した。


あっ浩に口止めすんの忘れた。
……ま、いっか!


昼休みで人の溢れる廊下を
たらたら歩き購買へ向かう。


すると紙パックの自販機の前に立ち
腕を組んで飲み物を選ぶ女が見えた。

気付かれないように静かに背後に回る。


前には茶色く綺麗に巻かれた髪。

そいつが百円玉を入れ
烏龍茶のボタンを押すより先に
手を伸ばしてボタンを拳で叩いた。

ガコンと俺の選んだ紙パックが落ちる音。


「ちょっ!何すんのよ!?

……リョウ」


文句を言いつつ振り向いた真希は
俺の姿を見たとたん
驚いた顔をして固まった。

俺はしてやったりとにやけながら
彼女を見下ろす。


「真希背後甘すぎ。
俺らの間じゃ自販の前は戦場だから」

「そんなの知らないってば
……ってなにこれ!
私今日昼おにぎりなんだけど!」


と自販機から取り出した
バナナオレを突き出す。


「あ〜それはご愁傷様。
でも俺なんかこの前カズマに
メロンパンの時
メロンオレ買わされたんだけど。
どんだけメロン好きなんだよって!

まぁ仕返しに体育の後
オシルコ買わせたけどな」

「あはっ!あんたたち、
バカでしょ!?」


真希は吹き出したように笑った後
視線を下に向けた。

しばしの沈黙の後


「もう、
話しかけてくれないかと思った」

「何で」

「だってあたし、西条さんの事」


段々声が小さくなって
フェードアウトしていく。

いつにない弱気な態度の真希に
静かに語りかけた。


「アキに謝ったらしいじゃん?」