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木曜日。


「なあリョウ、
東亞女子の久美ちゃんから
お前の携帯つながんねーって
苦情がきてんだけど」

「あ?何だって?」


昼休み。
前の授業の延長で
机に突っ伏して眠りこけていると

前の席の背もたれを跨ぐように座って
俺に向かって抗議の声を上げた
クラスメイトの浩によって起こされる。


「だから、前合コンして
お前と途中で消えた
お嬢様女子高の久美ちゃんだって。

何で新しい携番教えねーんだよ。
俺経由で教えちゃってもいい?」


まだ半分寝てる頭を働かせて
目を擦りながら記憶をたどる。


……久美って誰だって?


…………。


「……ってあぁ思い出した。
お前らに騙されて連れてかれたアレか。
そういえばアイツそんな名前だったかも。
でも顔全然思い出せね〜」


欠伸しながらそう言うと
浩は俺に白い目を向ける。


「騙されたとか言いながら
1番いい思いしてんじゃねーかよ。
久美ちゃんあの三人の中じゃ
1番かわいかったのに。

“この前の続きは?”だって
てめー何したんだよ」


えーっと、確かケンゴから電話あって
やってる途中で逃げたんだっけ。

色々ありすぎてすっかり忘れてた。


はい反省反省。
堕落した俺バイバイ。


「浩、右手上げて」

「エッ!?なして?」


訝しげに眉をひそめながらも
素直に右手をあげた浩の掌に
俺の掌を打ち付ける。

パチンといい音がした。


「選手交代」

「……?」

「あのさ、その気ないから
上手いことかわしといてくんね?
携番も教えない方向で。

やっぱ
持つべきものは友達だよな。
ありがとう浩君」