「ありがとう」

「何が?
文句言われるならまだしも
お礼言われること
何もした覚えないけど」


彼女の黒髪が静かに風になびく。


「あの曲を
サイトに載せたの私だから」

「は!!??」


想像もしてない事実に
ありえないほど大きな声が出て
通行人が何人かうるさそうに俺を見た。

でもそんなの気にしてらんねーし。


「どうしてそんな事」


少しだけ、声が震えた。


「罪滅ぼしのつもりだった。

私のせいであの子いろんなもの失って
だから誰かに彼女を救って欲しかった。
私にはもう無理だから」

「…………」

「あの子を、
アキの声を見つけてくれて
ありがとう」


そう言って静かに微笑んだ彼女は
泣き出すんじゃないかと思ったくらい
そんなさびしそうな顔をした。


こっちこそアキの声に
出会わせてくれてありがとうとか
思ったけど

結局俺は何も言えなくて

彼女の胸の痛みが
伝染したみたいになって
ただ視線を送ることしか出来なかった。