「あのね……」


遠慮がちに口を開いた彼女の声に
かぶせるように言った。


「悪い、お前病み上がりだもんな。
そうゆうの頭吹っ飛んでた。
もうしねぇからそんな警戒すんな」

「……う、うん」


表情を固くしたまま頷き
立ち上がって俺を見る。

そんな彼女の正面に立ち
お互いに見つめあう。


さっきのように
その視線は絡まることはない。


――動揺すんな。


少し深く呼吸をして気持ちを切り替える。


「今日俺色々言ったけど
全部間違いなく本心だから
信じて欲しい。

で、よく考えてバンドのこと決めてくれ。

もしお前が少しでも
俺らと音楽やりたいって、
バンドで歌を歌いたいって思ったら
来週の土曜“COUNT ZERO"って
隣町のライブハウスでライブやるから
そこに来て欲しい。

もしお前が来なかったら
もうきっぱり諦めるから」

「……わかった」


真剣に俺の言葉を受け止めてくれたって
彼女の顔を見てわかったから


「じゃあ、俺帰るな。
まだ体調万全じゃないなら
ちゃんと寝てろよ。

あと飯、キッチンに置いてあるから
ちゃんと食えよ」

「わかった、色々ありがとう」


和やかながらも
驚くぐらいあっけなく
その日の別れは訪れた。

もちろん引き止めたりはされねぇし。


――アキのマンションを出て
真昼間の太陽の下
どうしようもない気分で家までの道を歩く。