はだけた制服を直しながら
ベッドサイドに置かれた鞄を
ゴソゴソあさるアキ。

それを横目で見た後
バタリとその場に仰向けになる俺。

視界には無機質な白いタイルの天井。


あ〜くそっ
誰だよこんな時に。

知ってるやつだったら
ぜってー後でシメル。


とか、実は全然余裕のない俺の耳に
かすかに聞こえてきた
「もしもし」って声に驚き跳び起きた。


……何だ今の?


振り向くとアキはベッドのそばに座って
片手は携帯
もう片方はシャツを
閉じるようにして握ってる。

聞こえてくる言葉は
「うん」とか「わかった」とか
そっけないものなのに

その表情と声のトーンから
はっきりと感じた。


――電話の相手は例の“好きな奴”。

間違いない。


妙な焦りで、
思わず拳を強く握りしめる。

さっきまでの身体の熱が
驚くほど急速に引いていった。


通話を切って俺の方を見た彼女は
罪悪感とか後悔とか
明らかにそんな雰囲気で

さっきまでは消えたと思ってた
彼女のバリアが再び復活してた。


このときの俺と彼女の関係を
例えて言うなら

急に部屋のカーテンが閉められた感じ?

ドアに鍵掛けられてチェーンまで…とか

それか頑丈なシャッターが下りてきて
閉店ですとか

……っていうか店ごとどっか
ふっ飛んでったみたいな。


――こんなふざけた考えしか
浮かばないぐらい
このときの俺は動揺してた。