「な、なにしてんの!?」

「そうだな、強いて言うなら
怠惰な過去の自分との決別?」


俺の掌から目を反らさないまま
信じられないって顔で
目を大きく見開くアキ。

俺は口の端を歪ませるみたいに笑い
二つに割れた携帯を両方の掌で弄ぶ。


「そういう意味じゃない!
なんでそんな事」

「さっきから言ってんだろ?
俺はお前以外いらねーし
後はもうこんな感じで」


そして割れた携帯電話を
軽くベランダに放り投げた。


今度はガシャンと音がして
電池パックがぶっ飛んだり
破片が散らばったり。

完璧に再起不能だ。


携帯だけで繋がってた女もいたけど
そんな付き合いはもうやめだ。
もうこいつ以外見えねーし。


しばらくその残骸を眺めた後
アキは眉をひそめて言った。


「あれ、誰が掃除するの?」

「はは、そっちかよ。
そのままにしとけば?
この日の記念に」

「記念って何の?」


俺はその返事のかわりに
ベランダに半分
足を投げ出して座ったまま腕を伸ばし

隣で床に座るアキを俺の膝の上にのせ
お互い向かい合う形で再びキスをする。