内心大きく出過ぎたかって思ったけど
どうにかしてこいつの心を
揺れ動かしたかった。


でも最後に少しだけ
弱気になった俺の言葉に
アキは柔らかく笑った。


しょーがねーだろ。
奴らの曲はやっぱ“別格”だ。


「そうだね。正直に言うと
ずっと歌ってみたいって思ってた
リョウの曲」

「だったら歌えよ、アキ。
カズマもケンゴもお前の事待ってる。
俺達が揃えば
叶わない夢なんてきっとなくなる。

バンドやるなら、 
技術的な面でも性格でも
こいつら以上の相手なんかいない。

きっと今までに感じたことのない事
いっぱい見れると思うし
お前の音の世界も広がると思う」


――アキはしばらく黙り込んで
何か色々考えてるみたいだった。


そして心の底から困った顔をして


「……このまま流されそうな
自分がいる」

「おお、いいんじゃねえ?
時には深く考えないで
流されることも大切だ」

「本当自分でも嫌になるけど
自分の壁を崩すのがすごく怖くって。

別にリョウの事
うたぐってる訳じゃないよ?
この前リョウは否定してたけど
私にホントにやさしいと思うし

……少し、惹かれてるのかも
もしかしたら」


――初めて聞くその“本音”に
ドキンと心臓が高鳴った。