振り返るとベッドに座って
こっちをじっと見てるアキ。

いつから見てたのかわからないけど
今にも泣き出しそうな表情。


「どうした?
どっか痛いとか?」


胸に抱えたギターを
壁に立てかけながら声をかけると
アキは無言で首をふる。


「ホントに?
無理すんなよ?」

「大丈夫、何でもないよ。
リョウギターも上手いんだ。
思わず見とれちゃったよ」

「嘘つくな。
俺のギターなんか
素人に毛が生えたレベルだっつーの」

「違うよ、技術うんぬんじゃなくてさ
やっぱ他の人と“音”が違う。
ちょっと羨ましくなっちゃった。
リョウは選ばれた人間なんだね」


髪の毛に手をやりながら
悔しそうに笑って俺の側に座る。


「……は!?
そんなの知らねーよ!」

「あ〜照れてる」

「うっさいな。
それを言ったら
お前の“声”はどうなんだよ?」


アキの肩がビクッと震えた。

視線が絡まり
慌てたようにアキが目を反らす。


「もう勧誘しないって言った」

「“学校では”って言ったろ」

「……嘘つき。
あ、そうだお礼何も言ってなかったね。
送ってくれてありがとう。
……それに私のギター
守ってくれてありがとう」

「お前、話題変えようとしてんだろ?
……まあいっか。
朝のは元の原因は俺だし気にすんな」

「でも、寝不足でちょっとイライラして
彼女に言わなくていい事
いっぱい言っちゃったし。

やっぱ昨日一日バイトのシフト
入れまくったのはやりすぎだったな」


………え?


独り言のように言った
最後の一文が頭にひっかかる。


今なんつった?